ニュース・日記

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風通信86

2017/03/20(Mon)
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映画の話をもう一回だけしよう。
といっても、前回の反省で、
映画そのものに言及するわけじゃない。
タイトルについてです。

“Catch Me If You Can”
邦題は『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』
まんまですね。
作品自体は、僕としては可もなく不可もなし。
レオナルド・ディカプリオが
年齢的にちょっと無理があったかなとは思ったけれど、
それなりに楽しめた作品だった。

アメリカ映画にときどき登場するエンターテイメント系詐欺映画。
もっとも、これは実話らしい。
次から次へと網を逃れる犯人をFBIが威信をかけて追うという話だから、
原題はなるほどそうだろうと思う。
それをそのまんまカタカナにしたところがねぇ。
これという代替案の知恵も浮かばないから、
実はなんとも言いようがなく、言う資格もないんだけど、
どうも、
日本語の力が失われつつあることの例証のような気がして。

なんとかならんかったのかなぁ(笑)

もともと映画のタイトルは、邦題にするに当たって、
そのまま翻訳することが多かったのは確かだ。
“City Lights”を『街の灯』としたように。
でも、『都市の光』じゃなく、あくまで詩的。
だから、上記の作品の場合、致し方なかったかもしれないけれど、
フレッド・ジンネマンの名作、“A Man for All Seasons”を
『マン・フォー・オール・シーズンズ』とはしないはずだ。
ちなみにこの作品は『わが命つきるとも』が邦題。格調高いですね。
行き過ぎなのは“Love in the Afternoon”かなぁ。
どのように邦題を付けます?
当時の配給会社が付けたのが『昼下がりの情事』(笑)
おいおい、これじゃ、今は懐かしい日活ロマンポルノじゃないか。
オードリーが泣きますよね。
監督のビリー・ワイルダーが泣きますよね。
ビリー・ワイルダーと言えば、“The Apartment”は、
『アパートの鍵貸します』。なるほど、当時のアメリカには、
常に進化途上にある日本のラブ・ホテルのようなものはなかったか、
などという歴史社会学的な考察を誘う。
彼の作品で言えば“Some Like It Hot”はいいですね。
『お熱いのがお好き』だから、ケネディ兄弟を魅了した
コケティッシュなマリリン・モンローの姿態が目に浮かびそうだ。
今にして思えば、原題そのまんまが良かったと思えるのが『旅情』。
『旅情』としちゃうと、なんか川端康成の名作みたい。
「旅情が身についた・・・」みたいな。
アメリカの地方都市で秘書をしている40前の独身女性の
長期休暇の旅先ヴェニスでの
アヴァンチュール(と言うにはちょっと語弊があるけれど)。
イタリア男とアメリカ中西部のオールドミスです。あは。
恋というには、あまりに非日常。だからこそ、原題は“Summertime”。

映画はそこに物語があるから、それでいいのかもしれない。

その点、ジャズは違う。
ストレートに心に突き刺さって、物語は聴いている僕らで創るんです。
僕は古いジャズをいつも部屋で鳴らしているんだけど、
昔の曲はなんともいいタイトルがある。
たとえば“Body&Soul”・・・これは『身も心も』という。
身も心も・・・だから? と問うと身も蓋もないけれど。
“I Can't Get Started ”は「私ははじめることが出来ません」ではなく、
『言い出しかねて』。これなんか、僕は大好きなタイトルです。
言いたい言葉とは何だったのか・・・。懐かしい感情、身に滲みるなぁ。
そういう状況に立ち至った諸氏は多いのではなかろうか。
もちろん、歌詞の内容とは無関係だけど、
それでも、タイトルを見ただけでひとつの物語が生まれてきそうだ。
まあ、もっともね、「〜をしようとして、できない」という意味の
「〜かねる」という補助的な動詞そのものが、
いまでは死語かもしれないから、仕方ないだろうけど、
こうした(僕にとっては)美しい日本語が
失われつつあるんじゃないかと思う今日この頃。
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