ニュース・日記

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風通信87

2017/03/24(Fri)
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ミュージカルよりは、オペラの方が好きなのだが、
ミュージカル映画は、いくつか見ている。
『アマデウス』は別格として、
中でも『サウンド・オブ・ミュージック』は、何度か見ましたね。
空からカメラが降りてきて、
高原のジュリー・アンドリュースに定まるオープニング。
アルプスを越えて空にカメラが帰るエンディングまで、
間断なくドラマは進行する。
ロジャースとハマースタインのコンビによる最後の作品だが、
その中に、『My Favorite Things』という曲がある。

想い出深い曲だ。

大学生のある時期、ほんとにお金がなくて、
舗装されていない脇道で空き瓶(ビール瓶)を拾って、
それを丁寧に流しで洗い、
酒屋に売りに行くことが何度かあった。
たしか10円っでしたね。
冬の寒い日なんかは下宿の周りを2、30分も歩けば、
4〜5本は落ちていたものだ。
下宿屋の共同流しの水が冷たかったのを覚えている。
私鉄の二駅くらいは当時100円以内で乗車できたから、
何枚かの10円玉を握って、よく友達の下宿に転がり込んだものだ。

中野坂上に住んでいたのが、永留俊一という男で、
大学を卒業した後、地元のラジオ局に就職した。
彼にはお世話になりました。ありがとう。

当時は、まだ大学紛争の余波がそこかしこに残っていた時期で、
彼の通っていた大学もロックアウトが続いていた。
しかし、永留君はアルバイトもせずに、
多くの時間を自分の下宿で過ごしていたように思う。
そして、音楽ばかり聴いていた。
別段、彼が裕福な家庭に育ったというわけではない。
そうでない学生もいただろうが、僕の周りは、あの頃は、
みんな一様に貧しかったのです。
だから、転がり込むにはいい条件だった。
ダントンだかロベスピエールだかみたいに、
弁舌を奮うラディカルな革命思想で、
世の中にある欺瞞や不正を糺す議論をしていたわけではなく、
ひたすら麻雀ばかりしていたわけだが、ある時、永留君が
「こういうの、聴いたことある?」と言いながら、
DISC・UNIONの赤と黒のビニールパッケージから、
一枚のレコードを取り出した。それが、
ジョン・コルトレーンの『My Favorite Things』だった。
もっとも、そのレコードは北欧のどこか(スウェーデンだったか)の、
ライブ(おそらくブートレク)盤で、
片面の25分のすべてが、この曲だった。
マッコイ・タイナーのピアノが導入する。
すぐに、コルトレーンの奇跡的に美しいソロが始まる。
ソプラノ・サックスという楽器を知ったのも初めてだったなぁ。
繰り返し、繰り返し、何度聞いたかわからない。
ともあれ、圧倒的な出会いだった。

このときから、僕のジャズは始まる。

たぶん、いろんな事柄が身につくのは、
お金がなくて、時間がたっぷりある頃なのだと思う。
あるいは・・・
・・・木星の岸辺にでも漂着したような、
たとえようもない寂しさの中でとかね。
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