ニュース・日記

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風通信112

2017/07/30(Sun)
風通信 |
『あの頃ペニー・レインと』という映画がある。
原題は「Almost Famous」だから、
そのままでは邦題にはなり得なかっただろうし、
営業方針として、女優のケイト・ハドソンを
売り出す映画だったのかもしれないが、素敵なタイトルです。
彼女の魅力と相まって、
ロック好きには、大いにそそられる作品だ。
オールマン・ブラザーズ・バンドのポスターが、
主人公の部屋に、さりげなく張ってあったり(これはかなり意図的)、
映画の冒頭からサイモンとガーファンクルのレコードが
レコードプレイヤーのターンテーブルに載せられたりする。
劇中で唄われるエルトン・ジョンの“Tiny Dancer”には胸が熱くなる。

その中に、そんなのありかなと思える箇所がある。

ペニー・レイン役のケイト・ハドソン(個人的に好みです)が
飛行機で地元へ帰るところ。
見送る彼女を見送るウイリアム(主人公です)が
ロビーから滑走路を眺めている。
そこへイースター航空の飛行機がゆっくりと現れる。
飛行機の座席に傷心のペニー・レインが座っている。
予感を持った(という演出です)ペニーが
窓の方へ身を寄せる。カメラが彼女の背中越しに、
ロビーで手を振っているウイリアムを見せる。
飛行機はゆっくりと滑走路へ向かう。
飛行機の動きに合わせて、ロビーの中をウイリアムが走る。
サスペンス・アクションドラマじゃないから、
ロビーで人にぶつかるだの、
彼が障害物(たとえば大きな観葉植物鉢)にぶつかるだの、
そういう演出はなし。
彼はただひたすら走るだけ。飛行機の窓を通してそれが見える。
もちろんペニーは気づくんだけど、
彼女は手を振らないし、彼女のアップも無し。
飛行機はなおもゆっくりと滑っていく。
ついて行けなくなったウイリアムがロビーの端で、
立ちすくむというか、取り残される構図。
今度はウイリアムの背中越しに飛行機が離れて行くカット。
そして、微笑みをたたえながら、
飛行機に向かって肩の横で手を振るウイリアム。

長くなったけれど、
あるんですね、こういうシーンが。
いや、昔の映画でよくあった、駅のホームでの別れなら分かる。
センチメンタルなシーンになったはずだ。
でも、飛行機です。
それはないだろう・・・、と思いつつ、
もちろん、監督・脚本のキャメロン・クロウの狙いは
ちゃんとあるはずで、僕もだってその意図は分かるんだけどね。
それでも、飛行機です。

悲しい別れではない。それは出発のための別れ。
たぶん、人はそうやっていくつもの別れを経て大人になっていく。
上手な別れ方と下手な別れ方があるけれど、
見かけや振る舞いは別としてね、
人間としての清潔感がそれを決めるんじゃなかな、と。
ウイリアムは15才だったしね。
彼が生まれてはじめてキスしたのは
ペニー・レインだったしね。

それにしても、飛行機ですよ。ありかなぁ〜。
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