ニュース・日記

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風通信124

2017/09/24(Sun)
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昨日、本を読む時間がないと書いた。
思うんだけど、時間がないと嘆くよりは、
別のことを考えた方がいいですよね。
それで、詩集をひもときました。
菅原克己の詩集。

ガールフレンドのひとりで、
詩の好きな子がいるんだけど、彼女知っているかなぁ。
戦前は投獄もされた
共産党系のすごくマーナーな詩人です。

たとえば、こういう詩。
『涙』という詩です。

 どうしてよいかわからないとき、
 涙はうぶ毛の頬を伝わった。
 十七才の娘にはわからないことが多すぎて、
 なぜ、素直なことが素直にゆかないか、
 正直に言ったことがいろんな問題をひきおこすか、
 それを抗議するように
 涙はひとりでに流れた。
 苦しいことを苦しいと
 口に出して言えない言葉は
 すぐに涙となってながれた。
    (中略)
 ああ、大人になりかけて
 いろんな世の中の出来ごとが一時にあふれ、
 やわらかい芽が雨にぬれるように
 涙はあなたの蒼みがかった瞳を濡らす。

『ブラザー軒』は高田渡が曲をつけている。

 東一番丁、
 ブラザー軒。
 硝子簾がキラキラ波うち、
 あたりいちめん氷を噛む音。
 死んだおやじが入ってくる。
 死んだ妹をつれて
 氷水をたべに、
 ぼくのわきへ。
 色あせたメリンスの着物。
 おできいっぱいつけた妹。
 ミルクセーキの音に、
 びっくりしながら
 細い脛だして
 椅子にずり上がる。
 外は濃藍色のたなばたの夜。
 肥ったおやじは
 小さい妹をながめ、
 満足げに氷を噛み、
 ひげを拭く。
 妹は匙ですくう
 白い氷のかけら。
 ふたりには声がない。
 ふたりにはぼくが見えない。
 おやじはひげを拭く。
 妹は氷をこぼす。
 簾はキラキラ、
 風鈴の音、
 あたりいちめん氷を噛む音。
 死者ふたり、
 つれだって帰る、
 ぼくの前を。
 小さい妹が先に立ち、
 おやじはゆったりと。
 東一番丁、
 ブラザー軒。
 たなばたの夜。
 キラキラ波うつ
 硝子簾の向うの闇に。

この年になると
こういう哀しみはいたく響くんだなぁ。
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