クローサー(初演版):概要

クローサー(初演版):概要

【基本概要】

登場人物 : 
アリス Alice(女、20代前半)
ダン Dan(男、30代)
ラリー Larry(男、30代後半あるいは40代前半)
アンナ Anna(女、30代半ば)

場面 : 全2幕12場

時代設定 : 1993年から1997年

舞台 : ロンドン

〈第1場〉 1993年1月、病院、早朝。

新聞の死亡記事を書いて暮らしている作家くずれのダンは、交通事故に遭ったアリスを病院に運び込む。幸い怪我は左足のかすり傷だけですんだ。
アリスはクラブで遊んだ帰りにポストマンズ・パークに立ち寄り、そのあとバラに行くためにブラックフライヤーズ・ブリッジを渡る途中でタクシーにはねられたのだった。偶然通りかかったダンを見て、アリスは道路に横になったまま "Hello, stranger" と声をかけた。これが二人の出会いである。
アリスが立ち寄ったポストマンズ・パークには、自分を犠牲にして人の命を救った名もなき人々のモニュメントがあるのだという。ダンは、母親がこの病院で死んだとき、父親がポストマンズ・パークで泣き続けていたことしか記憶にない。
アリスはストリッパーで、男性とアメリカを旅していたが、彼とも別れ、昨日ロンドンにもどってきたばかりだと話す。見かけは少年のようだが、謎につつまれたこの女性と話すうち、ダンはその魅力にひかれ、アリスもまたダンこそが自分の魂を救済してくれるのではないかと感じ始める。
なお、ふたりのやりとりの途中に医者が通りかかり、アリスの傷を見てやる。彼は事故で負った傷よりも、むしろその横にある古傷に興味を示す。アリスは「アメリカでトラックにひかれた」と話す。この医者が後に二人の運命に関わってくるラリーであることを、二人はまだ知らない。

〈第2場〉 1994年6月、アンナのスタジオ、午後。

ダンはアリスと暮らし始め、その生活を小説に書いた。
出版用の顔写真をとるため、今ダンは女流写真家アンナのスタジオにいる。ダンは自分の全生活にまとわりついてくるアリスにうんざりしており、仕事をする大人の女性特有の力強さを持ったアンナに一目惚れする。ダンはその場でアンナに気持ちを打ち明けるが、アンナは冗談としてとりあわない。アンナはダンの小説をほめる。ダンはアンナの発案で、題名を『水族館』にすることにする。
アリスがダンを迎えに来る。アンナはアリスの求めに応じて写真を撮ってやることにする。アリスはダンを外で待たせ、先ほどの二人のやりとりと立ち聞きしていたことをアンナに話す。アンナはダンをあなたから取る気はないと約束する。

〈第3場〉 1995年1月、ダンのフラット/ラリーの病院の書斎、夕方。

ラリーは、ダンが開いているインターネットのウェブ・サイトに偶然アクセスする。ダンは「アンナ」と名乗って、卑わいな言葉でラリーを誘惑し、明日水族館で逢おうと約束する。

〈第4場〉 1995年1月、水族館、午後。

翌日、ラリーは目印の白衣をコートの下に着て水族館に来る。目の前にはアンナが水槽を眺めて立っている。ラリーは相手がゆうべの女性だと思いこんで話を進めるが、アンナには全く心当たりがない。すべてはアンナの気を引くためのダンの子供っぽいいたずらであった。ラリーは「アンナ」に渡すつもりで持ってきたバラの花を渡す。アンナは喜んでそれを受け取る。今日はアンナの誕生日であった。

〈第5場〉 1995年6月、ギャラリー、夜。

アンナとラリーは水族館の一件を機に交際を始めた。
アンナは Stranger と銘打った、小さな写真の個展を開く。会場のギャラリーにはダンとアリスがいる。目の前には大きく引き伸ばされ、"Young Woman London"と題されたアリスの写真。あのときアリスに頼まれて撮ったものである。
ダンは1作目の小説『水族館』が当たらず、再び死亡記事の仕事を始めた。父親が死に、今日はその葬儀に一人で発つところである。アリスは、自分を連れていってくれないことに不満を訴えるが、ダンはそんなアリスにうんざりしてその場を去る。
アリスはラリーとギャラリーで出くわし、彼が病院で自分の足をみた医者であることを思い出す。ラリーもまた彼女の足の古傷を思いだし、その原因を聞く。アリスは「マフィアに撃たれた」とかわす。
一方、同じギャラリーでダンは1年ぶりにアンナに出会い、結婚をせまるが、アンナはすでにラリーと結婚間近の状態にあった。

〈第6場〉 1996年6月、アンナとラリーの部屋/アリスとダンの部屋、午前零時。

1年たった。アンナはラリーと結婚し、アリスはあいかわらずダンと同棲している。
ラリーの帰りを待つアンナと、ダンの帰りを待つアリス。2つの場面が1つの舞台で同時進行する。
ダンが帰って来る。今までどこにいたのかと聞くアリスに対し、ダンはアンナと一緒にいたことを打ち明ける。ダンはギャラリー以来、アンナと1年間もつき合っていたのだ。「なぜ」というアリスの問いに対し、「彼女は僕を必要としていないからだ」とダンは答える。アリスは荷物を小さな袋にまとめて出ていく。
一方ラリーはアメリカへの出張から帰ってくる。アンナは写真家としてアメリカでも売れ始めており、ラリーはそれを誇りに思う一方、二人の仲がしっくりいかないことを感じている。ラリーは欲求不満からアメリカで売春婦を買ったことをアンナに打ち明ける。アンナが「なぜ私に話したの」と聞くと、「君にはうそをつけなかった。愛しているから」とラリーは答える。ラリーはアンナが浮気をしているのではないかと問いつめる。アンナはダンとつき合っていることを認める。さらに激しく問いつめるラリーに対し、アンナはダンとのセックスの内容まで話すことになる。

〈第7場〉 1996年9月、ストリップ・クラブ、深夜。

アンナと別れたラリーは、ふらっと立ち寄ったクラブでストリッパーに戻ったアリスと再会する。アリスはダンの元を去って以来、行方知れずになっていたのである。ラリーは、アリスがダンのもとへ戻ればアンナも自分のところへ帰ってくると思い、アリスを説得しようとするが、アリスは自分はアリスという名前ではなく、ジェーン・ジョーンズだと言い張る。

〈第8場〉 1996年10月、コンサートホール、夜。

ダンがホールのバーでアンナを待っていると、アンナが遅れて駆けつける。アンナは離婚届にサインをもらうためにラリーに会っていたのである。拒み続けていたラリーはサインをした。そのかわりアンナはラリーと再び関係を持ってしまう。そしてそのことを正直にダンに打ち明けるのである。「なぜ僕にうそをつかなかったんだ」とダンが聞くと、「私はあなたにうそはつきたくなかったの」とアンナは答える。「たかがセックスじゃない」というアンナと、そのことにこだわるダンとでは、話はいつまでも平行線のままである。
(この場面は実際の上演ではレストランに設定が変えられている。また、アンナとラリーが会うフラッシュバックシーンが挿入されているなど、かなりの改変がある)。

〈第9場〉 1996年11月、博物館、午後。

ラリーの誕生日である。アリスはラリーを待っている。ラリーとの関係はクラブ以来続いている。ラリーはポストマン・パークに立ち寄ったあと、遅れてやってきた。アリスはラリーにプレゼントを渡して席を外す。
入れ替わりにアンナが入ってくる。突然の再会に驚く二人。アリスがネガを返してもらう口実でアンナを呼び寄せたのだ。アンナは、行方不明のアリスがラリーとつき合っていたことに驚くが、ラリーは関係を否定する。一方アンナとダンとの仲はうまく行かなくなっていた。離婚届にサインをしたあの日、関係を持ったことをダンに正直に話せといったのは実はラリーであった。しかも、アンナは離婚届をまだ弁護士に提出しないままである。
ラリーが去ったあと、アンナはアリスと二人きりになる。アリスは、ラリーのもとにもどるようアンナにいう。

〈第10場〉 1996年12月、ラリーの医院、午後。

ラリーは病院を辞め、独立して皮膚科の医院を開業している。
アンナはラリーのもとに帰ってきた。ダンはラリーの診療室を訪れ、アンナを返してくれと頼む。「お前はアンナを愛していない。お前が愛しているのはお前自身だ」とラリーがいうと、「あんたは犬が飼い主を愛するように彼女を愛しているだけだ」とダン。「でも飼い主も犬を愛している」と、エゴむきだしのやりとりが続く。
結局ラリーの話は、アリスの足の古傷にいたる。「あの傷は、早くに両親を亡くし、精神的に追いつめられた子供に共通する傷だ。彼らは自分を責め、自分の体を傷つけてしまう。彼女は愛されることを望んでいるんだ」と。これを聞き、ダンは自分がアリスに辛くあたったことを後悔し、アリスとよりを戻す決心をする。
別れ際にラリーはダンにいう。「アリスと寝た」と。

〈第11場〉 1997年1月、ホテルの一室、深夜。

関係を修復したダンとアリスは空港近くのホテルにいる。明日は二人で行く始めての旅行である。旅行を計画したのはアリスで、ダンは行き先も知らず、パスポートもアリスに預けたままである。ダンは行き先がニューヨークだということまでは聞き出すが、パスポートを見せてくれというダンの要求には、写真が気に入らないからと、あくまでアリスは拒む。
二人はあの病院で初めてあったときのことを、お互いにどれだけ覚えているかを尋ねあううち、通りかかった医者の話になる。ダンは「あの医者を覚えているか」と聞くがアリスは「知らない」とうそをいう。足の古傷については、「子供の頃、補助輪をつけずに自転車に乗って、ふみはずしたの」とアリスは答える。
そしてダンはとうとう「君がラリーと寝たなら、僕にいってほしい」というひとことを口に出してしまう。アリスは「なにもなかった」と否定するが、執拗に問いつめるダン。瞬間、アリスの中でダンへの愛情が消える。アリス自身の口からそのことを打ち明けてほしいというダンに対し、アリスは別れを告げ、その場を立ち去る。

〈第12場〉 1997年6月、ポストマンズ・パーク、午後。

アンナとラリーは久々に再会する。二人の生活は長続きしなかった。ラリーは今は看護婦とつきあっている。
二人がこの公園に来たのは、ダンに呼び出されたからである。アリスが昨夜、ニューヨークで死んだということしか二人は知らない。
二人はモニュメントの中にアリス・アイリスという女性の名を見つける。モニュメントの説明を読む二人。「アリス・アイリス。ブラックフライヤーズの労働者の娘。1885年4月24日、バラのユニオン・ストリートにおいて、その若い命と引き替えに、火事で燃える家から3人の子供を助ける。3人の子供を救ったあと、彼女は燃える建物の窓に立っていた。群衆は彼女が飛び降りて助かることを願ったが、跳びそこなった彼女の体は欄干に串刺しとなった…」
患者が待っているからと、待ちくたびれたラリーがその場を去ろうとしたとき、ダンがスーツケースと花束を持って駆けつける。ラリーはダンにあいさつをして別れる。
残ったアンナに、ダンはアリスの話を始める。アリスの本名はジェーン・ジョーンズ。警察が彼女のアドレスブックをみてダンに電話をかけてきた。アリスは、ニューヨークで車にはねられて死んだのだった。アリスの両親の消息は不明。身元を保証する者がないので、ダンが行くことになった。「ラリーは間違ってた。あの古傷は、自転車から落ちたものだ」とダンは自分に言い聞かせるようにいうのだった。
ダンは花束をブラックフライヤーズ・ブリッジに置いて、これから空港に向かわねばならない。「さよなら」「うん、さよなら」ダンとアンナは手を振って別れる。

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