クローサー(再演版):劇評

クローサー(再演版):劇評

【クローサー(再演版):劇評】

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劇団アントンクルーの第七回公演「クローサー(パトリック・マーバー作/岩井眞實・上田修訳/安永史明演出)」を七月九日、ぽんプラザホールで観た。

「クローサー」は三年前の当劇団初演舞台を見逃し、最近封切られたハリウッド映画(マーバー自ら脚本執筆)も見ないまま。ただ、当劇団が一昨年公演した「ハワード・キャッツ」に感銘をうけ、マーバー作安永演出の舞台には強い関心をいだいていた。

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所はロンドン。時はインターネットチャットが出会いの契機にもなる現代。
ここ福岡でも起こりうる、四年半にわたる物語。

出演は四人。 四人みんなが、同等の価値をもつ主役。
女はストリッパーとフォトグラファー、男は死亡記事を仕事にする小説家志望と皮膚科医師。

四人のとり合わせは、半ば知的で半ば卑俗、具体的にしてシンボリックなのがおもしろい。
三角関係ならぬ四人の交錯は、時間とともに感情や肉体の叫びを越えて変化する。

随所に連発される際どい言葉の応酬は人間の本性本音を表して耳に心につきささり、それがために切ない。

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四人は同等の質量で描かれているとはいえ、作者マーバーはストリッパーのアリス(酒瀬川真世好演)に思いの花束をささげている。
アリスの「恋に落ちたんじゃないの。自分でパンのみみを切るチャーミングな人に私は愛をささげたの」という言い訳は哀切だ。

交通事故で死ぬ。自死かもしれぬ。

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キャスティングがいい。四人とも役にピッタリ。
ことに医師役の岩井眞實はきわめて日常的なセリフ回しで、いわばたくまざるユーモアの味わい。 それは翻訳者の強みでもあろうか。

舞台装置が秀逸。ベンチもベッドもすべて白。
人間の欲望と葛藤を鮮明に提示するには白バックは最適。

安永演出はどうか。俗に言う「キレがあってコクがある」舞台をつくり上げた。
見事な解釈力と統率力。

おかげで観客は二時間二十分、追体験と想像力を刺激される緊張感を強いられた。

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いまだに余韻が残る。

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2005/7/28 日本経済新聞「アプローチ九州文化」〜東 義人〜

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