三人姉妹:劇評

アントンクルーの三人姉妹:劇評

【アントンクルーの三人姉妹:劇評】

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まるでボードビルのようである。

チェーホフの戯曲といえばしかめ面で憂いに満ちた芝居ばかりが目につく。
だがこの「三人姉妹」の明るくて軽いこと。
退屈させない、はしゃいだチェーホフである。
(アントンクルー、岩井眞實翻案、安永史明演出、14日、福岡市・ぽんプラザホール)

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徹底して遊んでいる。

ロシアでなく現代日本が舞台。
しかも蒔岡家、幸子、幸子、妙子と来れば、谷崎潤一郎「細雪」のパロディーである。
(ちなみに長男の妻は鶴子)
70年代懐メロが随所に流れ、長テーブルに登場人物がずらりと並べば「最後の晩餐」。
長男が弾くラジオ体操の曲に合わせて皆が踊り、旅団兵は曲芸まで披露する。
作家が喜劇(時に笑劇)を想定して書いたとは言え、ギャグや小ネタか満載には驚く。
やや遊びすぎのきらいもあるが、意外にもこの作品の本質が浮かんで来るから面白い。

例えば、次女と旅団の中佐との不倫シーンにかかる懐メロは、二人の世界を「メロドラマ風」に仕立てる。
笑わせながら恋の主人公になりきった二人の愚かしさをうまく出している。
逢瀬の合図を演歌のワンフレーズで交わすシーンはなかなかである。
ボードビル的喧噪がそのまま彼らの無為・怠惰を映し出す。
から騒ぎの虚しさに比して、祭りの後の静けさの中、すべてを失ってなお三人姉妹が描く未来への希望や決意が確かなものに見えてくる。

なるほど対比の妙である。

翻案は、役名や地名のなじみ深さや、郷愁をイメージさせるためか。
だが浮世離れした世界に親近感は少なく、さほど必要性を感じない。
とはいえ、作品の意図を際立たせつつ、チェーホフの敷居を低くした意義は大きい。

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2008/12/19 朝日新聞〜柴山 麻妃

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