ニュース・日記

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風通信66

2015/05/24(Sun)
風通信 |
訃報です。

扇田昭彦さんが亡くなった。
大野城市のステージで、栗山民也さんと対談したときに、
ナビゲーターをしていただいた。
その後もなんどか、福岡でお目にかかった。
忘れてならないのは、
大阪市立大学での日本演劇学会で、発表を観ていただいたことだ。
穏やかで、優しい風情の方だった。
演出家としては、作品を観ていただけなかったのが
大きな心残りである。

先日のことだが、NHK・FMで、
浅川マキのデビューアルバム全曲紹介というプログラムがあった。
言うまでもなく、それはLPレコードです。
今の人にはわかりにくいかもしれないが、
LPレコードにはA面、B面があって、
A面はスタジオ録音。
B面は天井桟敷が関係する喫茶店みたいなところのライブ。
プロデュースが寺山修司さん。
カー・ステレオのボリューム・スイッチを上げて、
聴きながら、浅川マキも寺山さんももういないンだなぁと、
ため息を漏らしたばかりなのに。

演劇評論家としての扇田さんの業績は、
たくさんあるけれども、つねづね、僕は、
彼が唐十郎の「状況劇場」と同じ釜の飯を食いながら
旅公演を行ったことは素晴らしいと思っていた。
現代演劇が時代を切り拓いていた頃だったからだろうか、
そんなことが出来たのは。
おそらく、あのような演劇評論家はもう出ないだろう。

死は、「長き不在」である。
メールを送っても、
電話をしても、
手紙を書いても、
その応えは闇の中に探すことも出来ないけれど。
それでも、やはり「長き不在」である。
人はかりそめに面をあわせ、深切に別れを惜しむという。
だから、僕も灯火をかかげて、扇田さんを送ろう。

ご冥福を祈りたい。
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