ニュース・日記

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風通信81

2017/03/09(Thu)
風通信 |
三月というのに、昨日の朝、雪が舞った。
いつものように7時半には勤務先に到着する。
小高い山の中腹です。
坂道を走っていると、パラパラという感じで、
フロントガラスに水滴が付き、
すぐに白い雪に変わった。

伊勢正三の『なごり雪』があまりにも有名なので、
この時期に降る雪のことを「なごり雪」と多くの人が言う。
でも、たしか、三月に降る雪を「忘れ雪」とも言うのじゃなかったか。
もしかしたら、「忘れ雪」は三月の下旬の雪のことだったかもしれない。

僕の詩が、はじめて全国誌に掲載されたのは、
春まだき、三月のことだった。
渋谷にある大盛堂という書店の雑誌コーナーで、
その詩誌を手に取り、ページをめくっていくと、
『12月の風』というタイトルがあり、
それは、一月に編集部に送った僕の作品で・・・
あのときは嬉しかったですね。
街行く人々が、まるで自分のことを知っているような、
愚にも付かない思いを抱えて、道玄坂を登っていった。

そのころ、好きな女の子がいて、
僕は、必要以上に若くて、必要以上に不器用で、
そのくせ、向こうっ気ばかり強くて、
人に届ける言葉を知らなかった。
どうしようもない若者だった。
彼女がたしか群馬県の吾妻の出身で、帰省する日に駅まで
送っていこうかいくまいか、などという淡い感傷的な作品でしたね。
『ティファニーで朝食を』の冒頭に出てくるような、
都市の広い道路の明け方の幹線道路。
連なった信号が同時に点滅し、
夜を明かした車が一台走っている、そんな朝の迷い。
それでも、まあ、その時は精一杯。
センチメンタルな感情には出口がありません。
言わずもがなだけど、脚がキレイで、花のような女の子でした。
彼女というわけではないけれど、
恋したという記憶は、いつまでも心を温めてくれる。
しかし、結局のところ、時は流れ、
すべての美しい心持ちは、消えてゆく。
灰が風に吹かれるように。
僕らは、たぶんそのことに慣れなければならないのだろう。

暫定的なため息をつく。
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