ニュース・日記

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風通信92

2017/04/09(Sun)
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新聞を取らなくなってずいぶん経つ。
生まれた時から近年までずっと「朝日」を取っていたのだが、
ある時、もう読まなくてもいいかなと忽然と思った次第。
今の日本にジャーナリズムは存在しないような気がしている。
統制こそないけれど、
だんだん1945年より前の時代にさかのぼっているような気もするし。
僕はまた、ほとんどテレビを見ない。
たまさかのドキュメンタリーと、ローカルニュースくらいは見ます。
全国版のニュースは、
ちょっとばかり偏向しているような印象があるなぁ。
それに比べてローカルニュースは、
どっかの小学校の給食の話とか、地域のイベントの話題とか。
だから、人々のささやかな営みが映し出されるリアル感が心地よい。
その一方で、日本のドラマはここ20年近くほとんど見たことがない。
まず内容が透けて見えるし、台詞も予想の域を出ないことが多いのだ。
その点、欧米のドラマは違います。特に、ヨーロッパのドラマ。

最近終了した、NHKの『刑事フォイル』は珍しくすべて観た。
制作にも関わっていたアンソニー・ホロビッツが
ほとんどの脚本を書いていて、
いかにもイギリスの作家らしい彼の(脚)本は好きだったから、
飽きることなく見続けた。シニカルで、
つまり(と言っていいかどうか分からないのだけれど)現実主義、
声を荒げる場面もなければ、説教臭くもなく、
むやみに涙腺を緩めるようなエモーショナルなシーンもない。
冷静で紳士的、もちろん、さりげないユーモアはそこかしこに。

ピーター・シェーファー、アラン・エイクボーン、
少し硬派になるが、トム・ストッパードなど、
イギリスには優れた劇作家がたくさんいて、学ぶところは多い。
あ、アントンクルーで初演したパトリック・マーバーもいましたね。
もちろん、優れた小説家がそうであるように、
優れた劇作家は世界中に散在しているんだけど、
僕の趣味に合うのは、ほとんどイギリスの劇作家の作品になる。
有名どころは、上演権が高くて、
小屋で掛けることは難しいのが難点だけれど。

『刑事フォイル』は、イギリス南東部の港町ヘイスティングスでの物語で、
ジャンルとしてはミステリー・ドラマなのだが、
面白さを感じたのは、むしろ戦争中のイギリス地方都市の生活だった。
前回放送のシリーズから始まって、
今回のシリーズの最終回『警報解除』で第2次世界大戦が終わる。
作品は丁寧に造られている印象があり、制作費がかなりかかったと思われる。
戦争という状況がもたらすものは、
イギリスでも日本でも、要するにどこの国でも変わらない。
僕らが想像力を挟み込む余地がないほど現実的だ。
戦時下の圧倒的な狂気に翻弄される人々が
死の恐怖に襲われつつ、それでも日々淡々と過ごし、
ときには愚かしく、ときには賢明に生きていく姿が描かれます。

ところで、イギリスには、
劇作家兼、演出家兼、作曲家兼、俳優というマルチな才能を持つ、
ノエル・カワードという人物がいた。1899年生まれだから、
大戦中は脂の乗りきった40代だった。
ウエルメイドなその作品は好みではないのだが、
(三谷幸喜をソフィスケートした感じと思ってもらえればいいです)
アメリカにおけるジャズ・エイジな人々に近い。
たとえば、タートルネックのセーターも
彼が舞台で着たのが流行のはしりだったというのだから、
おしゃれ感覚は一流です。
当然のことながら、第2次世界大戦中も、我関せずで生きていた。
というより、戦争に背を向けたらしい。
そのため、「非国民」というレッテルを張られ、批判された。
そのとき、当時の首相ウインストン・チャーチルは、
まあ友人だったとはいえ、
「あんなやつ、戦場に行っても役に立たない。
 一人ぐらい恋だ愛だと歌っているやつがいてもいい」
と弁護したそうだ。

このあたりの感覚が、彼の国と本邦との違いかと。
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