ニュース・日記

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風通信35

2013/08/22(Thu)
風通信 |
イギリスの劇作家、アラン・エイクボーンが書いた
『ドアをあけると』は、僕の好きな芝居だ。
イギリス人らしい人間存在に対する風刺がピリリと効いて、
それでいて、人間に対する愛に満ちています。
ドアをあけると、時空を飛び越える世界がある。
舞台上の現在といくつもの過去を行ったり来たりして、
最終的には、未来へと繋ぐ。
新しい現在を作ることで。
そこに救済が用意されている芝居。

先日の話しだが、
時計が夜中の12時をまわったころ、携帯が鳴った。
若い友人からの電話だった。
夕方、彼にメールをしていたから、その件で。
「起きているだろうと思って・・・」・・・たしかに(笑)
昔は、12時を遙かにまわってよく電話が鳴ったものだ。
(僕が年を取ったせいか、さすがに、最近はありません)
「今ね、高校時代の友達と飲んどうとよォ〜」
暑い夏の夜である。
方々に散らばっていた仲間が、久し振りに会ったらしい。
メンバーの中にもう一人の若い友人がいて、
久し振りの声が聴けたことが嬉しかった。
身体をちょっと壊しているという話だったので、
元気そうな声で、そのことも嬉しかった。

いつの思うのだけれど、
高校時代や大学時代の友人と語り合うときは、
その横に、ドアがあるのではないかと思う。
そのドアをあけると、笑っている自分たちがいる。

若い頃というのは、だいたいとんでもないことをするものだ。
くだらないことにこだわったり、
泣いたり、笑ったりで、日々を過ごす。
そして、振り返るといつも笑っている。
もちろん、僕にだって経験はある。
時間はたっぷりとあって、
未来なんてあるのが当たり前で、考えるほどのものではなかった。
たしかに、まぁ、いうまでもないことなんだけれど、
ふと一人になった時など、これからどうなるのだろうと、
考えることはあるかも知れないですね。だけど、
友だちと、真剣につまらない遊びをしているときは、
人生の深遠さに思いを寄せることはなかった。
そういう自分たちが、ドアの向こうにいる。
そして、今はきっと失ってしまった笑い顔をしているのだ。

おそらく、そのようにして、
多くの人が、若い頃を生きてきたんだろうと思う。
安物の葉巻みたいに、価値がないと言ってはいけない。
馥郁たる香りはないかもしれないが、
二度と味わえないオリジナルな香りと、豊かな光に満ちた時代。
今、話しているこの場所の横に、ドアはある。
だから、懐かしいわけじゃない。
ドアの向こうで笑っている自分たちも、
ちょっと苦い思いをしながら生きている自分たちも、
それぞれに、そのときどきの自分で、
きっと、同期しているはずなのです。

僕にも、大学時代の友人たちがいる。
府中競馬場の近くで、みんなで共同生活をしていたことがある。
ある時、誰が始めたのか覚えてないのだが、
2リットルのペットボトルに水を満たして、
その水を出すのに要する時間を競い合った。
実にくだらないし、ばかばかしい。
でも、そのくだらないことに真剣に取り組んだ、そんな時。

夏の盛りの美しい夕暮れを、ベッドの窓から見ることは叶わず、
ただ言葉で感じながら、
友人のひとりは、静かにもうひとつの世界に逝った。
ちょうど、一年が経つ。

でも、いつだってドアを明けると、僕たちがいる。
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千秋楽から。

2013/08/18(Sun)
「ワーニャ・レッスン」の千秋楽から、だいぶ経過しておりますが、
あらためまして、
ご来場いただきました皆様ありがとうございました。

記録担当のわたしの感想としては、
新たな試みを入れた舞台で面白い仕上がりだったと思っています。
現在、劇団員一同、次回作に向けて、充電中です。

wa-nya-hairaito2.jpg
(ちょっと、窮屈になって見にくいとおしかりがありそうですが。)



でここからは、余談。
チェーホフ作品の上演情報をご紹介。東京です。

(以下敬称略ですいません)
一本目は、9月4日(水)〜9月28日(土)Bunkamuraシアターコクーン で
演出はケラリーノ・サンドロヴィッチで「かもめ」です。
シスカンパニーとKERAの四大戯曲連続上演企画の第1弾。
出演は、生田斗真・野村萬斎・蒼井優・大竹しのぶなどの競演です。
残念ながら福岡での予定はありませんが、10月4日(金)〜10月9日(水)は大阪公演があります。


二本目は、10月24日(木)〜27日(日)で東池袋のあうるすぽっと で
華のん企画主催、山崎清介演出の「三人姉妹」です。
2010年度紀伊國屋演劇賞団体賞受賞され2011年上演の再演です。

2009年の「ワーニャ伯父さん」を観ましたが、子どものためのシェイクスピアの演出方法とは違いますので、ご安心を。脚色はそれなりに入ってはいます。多分。
これも、福岡での上演情報はないんですけどね。すいません。

わたしは、今回「かもめ」を観に行く予定となっております。

以上
最近は観劇専門に戻っている、川中でした。

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風通信34

2013/08/06(Tue)
風通信 |
明日は、いよいよ『ワーニャ・レッスン』の千秋楽です。
今まで、この作品をご覧になった皆さまに、
心よりお礼を申し上げたい。
千秋楽であるとともに、
一年と二ヵ月続いた「水曜劇場」の一応の終わりである。
もともと、「水曜劇場」は、最低一年は続けるつもりだったから、
その意味では、心残りはありません。

ただ、人生の時は思いがけず早く流れるものだという、
わりと月並みな感慨が心に浮かぶ。
しかし、時は、空から見下ろすシナイ半島みたいに、
窓の外をただむなしく過ぎていくだけではない。
すべてがその流れに消えてしまったわけじゃないのですね。
亀岡や、岡本は、それぞれの尺度でずいぶんと成長したし、
若い劇団員も入団した。
人生痛苦多しといえども、
夕べに茜雲あり、暁の星に光あり、というじゃないですか(笑)
つまりね、僕らは終わりなき旅を続けるということでもある。

『ワーニャ・レッスン』の劇伴は・・・
本当は著作権に関わることなので、公には出来ないんだけれど、
ジャズにした。本編からカーテンコールまで。
いつものように方向性を決めて(今回はトランペット中心)
400曲くらい聴いたんだけれど、やっぱり“M”しかいなかった。
凡百の音に収斂されない、身体の芯を揺さぶる音の連なりに驚く。
やっぱり、偉大な音楽家です、彼は。
初演を観てくれた人が、
「今まで、何回か別の劇団でワーニャを観たんですが、
どれも、最後は同じようなパターンで・・・。ジャズは初めてです。
これもありなんですねぇ」と。
そうです、ありなんですね、はい。

まあ、それはそれで、良かったんだけど、
もう少し面白みを出したい、というかネ・・・、
ほら、最後の台詞は、チェーホフの白鳥の歌でしょ?
人生は長く、時として過酷なもの。
犠牲者が必要とされる場合もある。 
しかし、それを自ら引き受けることによって、
明日を生きようとするソーニャの台詞です。
だから、誰もが、深く共感し、
淋しい海に降るやさしい雨のように心に染みる。
だから、それを反転させたいと思って、前回からある試みをした。
カーテンコールに「情熱の砂漠」という昭和歌謡を持ってきたんです。
これが、我ながらハマっちゃって(笑)
できれば、その曲にそって振り付けをして、
劇団員が踊ってくれると嬉しいのだが、
ダンスは僕らには・・・それは無理、無理。

さて、明日は千秋楽。
満席になってくれると嬉しいのだが、それも無理、無理。
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