ニュース・日記

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風通信219

2025/03/29(Sat)
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『ザ・初見!』〜雨の、静かな週末〜が幕を閉じました。
たった一日の公演だったけど、
なにやかやで開演まで一年かかったんじゃないかな。
一日の公演でも、一週間の公演でも、
上演に向けて費やす労力は基本的に同じなんですね。
まあ、稽古の時間は差し引くとして。

平日、それも月曜日の公演だったにもかかわらず、
多くのお客さんを迎えられて、
そのこと自体はとても嬉しかった。
(こういう時、最近は「素直に」って言いますね?)
ありがとうございます。

後は会場費や、付帯設備費、
その他もろもろの現実がジワリと押し寄せてきます。
後処理にはおよそ一か月かかるだろう。
でも、今は、とりあえず一種の放心状態が続いている。

それにしても、閉演後の放心状態などというと、
大きな芝居をしたみたいに聞こえるかもしれないが、
たった一日の公演を打っただけであり、
観客の目に触れるのはたかだか2時間弱の舞台で、
なんちゃない、といえば言えなくもない。
でもまあ、疲れました。
寄る年波に勝てずという便利なことわざを使ってみたくなる。

中原中也の詩に、『頑是ない歌』という作品がある。

思へば遠く来たもんだ/十二の冬のあの夕べ
港の空に鳴り響いた/汽笛の湯気は今いづこ

ですね。
冒頭の一行を使って、
武田鉄矢が、歌を作っている。
きっと、この一節にインスパイアされたに違いない。
いまでは、そちらの方が有名かもしれない。
音程も定かでない武田鉄矢が歌ってもねぇ。
映画まで作られたみたいだが、困ったものだ。
(ちなみに、僕は観ていません)

軌道修正。
このごろ、この中也の一節が妙に身に染みるのです。
公演が終わって、
気づいたら、ふと口ずさんでいた。

『ザ・初見!』はなんども書いているように、
コロナ禍の中で企画された演劇スタイルです。
そういう特殊な事情だから、
本来の演劇の範疇には入らないのかもしれない。
まあ、邪道と言えば邪道である。
友人の中には、次は?という心優しき人間もいるけれど、
僕としては、これが最後かもしれないと思う。
完パケした後、制作の矢野とコーヒーを飲みながら、
・・・かもね、というと、
彼女がいつものようにニヤニヤしているのを見て、
苦いマンデリンといっしょにそっと言葉を流し込んだ。

とりあえず、アンケートを見てみるかな。
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