
ニュース・日記
“総合芸術”という言葉で、何を思い浮かべるだろう。
辞書的にいえば、
まずは、リヒャルト・ワーグナーの楽劇あたりだろうか。
“演劇”はもちろん、総合芸術です。
そこに含まれるのは、ハイカルチャーとしての
文学であるし、音楽であるし、美術であるし、
舞踏などのサブカルの要素も数多く含まれる。
アントンの芝居は、僕の趣味からけっこう劇伴に凝っていた。
最初に作品を支えている時代、地域などを考慮して、
楽曲のテーマを決める。
たとえば、『ハワード・キャッツ』だったら、
家族愛に満ちたアイルランドの音楽、
『リア王』だったら、ケルトの音楽という具合に。
『ワーニャ伯父さん』の場合は、人生の黄昏をイメージして、
中世から近代までのオーボエをメインにした室内楽。
部分的にも喜劇の『桜の園』では、
時代の変化にまるで無頓着なおばさんラネーフスカヤが
おそらく遊びまくったはずのパリ生活を彷彿とさせる
ミュゼットの類いとかです。
こうしたテーマ以外にも、
日常耳にしている楽曲で、
あ、これは舞台に使えるなぁというものがある。
そういうのを溜めておくと、経験上、いろんな芝居で使えるのです。
クィーンの❝Somebody to Love❞なんかの場合だと、
あるとき、車を走らせている途中でカーラジオから流れてきて、
ああ、これは・・・
客電が落ちて、暗転の中でイントロのハーモニーが流れてきて、
18秒後に緞帳が上がり、上がりきったところで、
明転になり、物語はじまる・・・たぶん、SF的な話がいいかもとか、
イメージが広がっていった、という具合に。
ちなみにこれは、
アントン以外の舞台で実際にそのように使った。
記憶に残っていると言えば、
『ティーンエイジャーのための演劇ワークショップ』で、
野田さんの『赤鬼』を上演したとき。
人間が本質的に持つレイシズムと、
自由への渇望を信じられない透明感で描いた傑作だから、
どういう劇伴がふさわしいだろうかと悩み、
最終的には、バッハの無伴奏チェロソナタを使った。
もちろん、第1番から第6番までのすべてが対象で、
しかも演奏者によって解釈表現が違うので、この曲はカザロスで、
この曲はシュタルケルで、この曲はマイスキーでとか、
それだけで、一か月を費やしたことを思い出す。
CDの時代だから、それができたのだと思う。
それが、いまや、サブスクの時代で、
たいていの楽曲はいくらでもネット上で聴くことができる。
To be continued
辞書的にいえば、
まずは、リヒャルト・ワーグナーの楽劇あたりだろうか。
“演劇”はもちろん、総合芸術です。
そこに含まれるのは、ハイカルチャーとしての
文学であるし、音楽であるし、美術であるし、
舞踏などのサブカルの要素も数多く含まれる。
アントンの芝居は、僕の趣味からけっこう劇伴に凝っていた。
最初に作品を支えている時代、地域などを考慮して、
楽曲のテーマを決める。
たとえば、『ハワード・キャッツ』だったら、
家族愛に満ちたアイルランドの音楽、
『リア王』だったら、ケルトの音楽という具合に。
『ワーニャ伯父さん』の場合は、人生の黄昏をイメージして、
中世から近代までのオーボエをメインにした室内楽。
部分的にも喜劇の『桜の園』では、
時代の変化にまるで無頓着なおばさんラネーフスカヤが
おそらく遊びまくったはずのパリ生活を彷彿とさせる
ミュゼットの類いとかです。
こうしたテーマ以外にも、
日常耳にしている楽曲で、
あ、これは舞台に使えるなぁというものがある。
そういうのを溜めておくと、経験上、いろんな芝居で使えるのです。
クィーンの❝Somebody to Love❞なんかの場合だと、
あるとき、車を走らせている途中でカーラジオから流れてきて、
ああ、これは・・・
客電が落ちて、暗転の中でイントロのハーモニーが流れてきて、
18秒後に緞帳が上がり、上がりきったところで、
明転になり、物語はじまる・・・たぶん、SF的な話がいいかもとか、
イメージが広がっていった、という具合に。
ちなみにこれは、
アントン以外の舞台で実際にそのように使った。
記憶に残っていると言えば、
『ティーンエイジャーのための演劇ワークショップ』で、
野田さんの『赤鬼』を上演したとき。
人間が本質的に持つレイシズムと、
自由への渇望を信じられない透明感で描いた傑作だから、
どういう劇伴がふさわしいだろうかと悩み、
最終的には、バッハの無伴奏チェロソナタを使った。
もちろん、第1番から第6番までのすべてが対象で、
しかも演奏者によって解釈表現が違うので、この曲はカザロスで、
この曲はシュタルケルで、この曲はマイスキーでとか、
それだけで、一か月を費やしたことを思い出す。
CDの時代だから、それができたのだと思う。
それが、いまや、サブスクの時代で、
たいていの楽曲はいくらでもネット上で聴くことができる。
To be continued