ニュース・日記

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風通信220

2025/04/02(Wed)
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“総合芸術”という言葉で、何を思い浮かべるだろう。
辞書的にいえば、
まずは、リヒャルト・ワーグナーの楽劇あたりだろうか。
“演劇”はもちろん、総合芸術です。
そこに含まれるのは、ハイカルチャーとしての
文学であるし、音楽であるし、美術であるし、
舞踏などのサブカルの要素も数多く含まれる。

アントンの芝居は、僕の趣味からけっこう劇伴に凝っていた。
最初に作品を支えている時代、地域などを考慮して、
楽曲のテーマを決める。
たとえば、『ハワード・キャッツ』だったら、
家族愛に満ちたアイルランドの音楽、
『リア王』だったら、ケルトの音楽という具合に。
『ワーニャ伯父さん』の場合は、人生の黄昏をイメージして、
中世から近代までのオーボエをメインにした室内楽。
部分的にも喜劇の『桜の園』では、
時代の変化にまるで無頓着なおばさんラネーフスカヤが
おそらく遊びまくったはずのパリ生活を彷彿とさせる
ミュゼットの類いとかです。

こうしたテーマ以外にも、
日常耳にしている楽曲で、
あ、これは舞台に使えるなぁというものがある。
そういうのを溜めておくと、経験上、いろんな芝居で使えるのです。
クィーンの❝Somebody to Love❞なんかの場合だと、
あるとき、車を走らせている途中でカーラジオから流れてきて、
ああ、これは・・・
客電が落ちて、暗転の中でイントロのハーモニーが流れてきて、
18秒後に緞帳が上がり、上がりきったところで、
明転になり、物語はじまる・・・たぶん、SF的な話がいいかもとか、
イメージが広がっていった、という具合に。
ちなみにこれは、
アントン以外の舞台で実際にそのように使った。

記憶に残っていると言えば、
『ティーンエイジャーのための演劇ワークショップ』で、
野田さんの『赤鬼』を上演したとき。
人間が本質的に持つレイシズムと、
自由への渇望を信じられない透明感で描いた傑作だから、
どういう劇伴がふさわしいだろうかと悩み、
最終的には、バッハの無伴奏チェロソナタを使った。
もちろん、第1番から第6番までのすべてが対象で、
しかも演奏者によって解釈表現が違うので、この曲はカザロスで、
この曲はシュタルケルで、この曲はマイスキーでとか、
それだけで、一か月を費やしたことを思い出す。

CDの時代だから、それができたのだと思う。

それが、いまや、サブスクの時代で、
たいていの楽曲はいくらでもネット上で聴くことができる。

To be continued
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風通信219

2025/03/29(Sat)
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『ザ・初見!』〜雨の、静かな週末〜が幕を閉じました。
たった一日の公演だったけど、
なにやかやで開演まで一年かかったんじゃないかな。
一日の公演でも、一週間の公演でも、
上演に向けて費やす労力は基本的に同じなんですね。
まあ、稽古の時間は差し引くとして。

平日、それも月曜日の公演だったにもかかわらず、
多くのお客さんを迎えられて、
そのこと自体はとても嬉しかった。
(こういう時、最近は「素直に」って言いますね?)
ありがとうございます。

後は会場費や、付帯設備費、
その他もろもろの現実がジワリと押し寄せてきます。
後処理にはおよそ一か月かかるだろう。
でも、今は、とりあえず一種の放心状態が続いている。

それにしても、閉演後の放心状態などというと、
大きな芝居をしたみたいに聞こえるかもしれないが、
たった一日の公演を打っただけであり、
観客の目に触れるのはたかだか2時間弱の舞台で、
なんちゃない、といえば言えなくもない。
でもまあ、疲れました。
寄る年波に勝てずという便利なことわざを使ってみたくなる。

中原中也の詩に、『頑是ない歌』という作品がある。

思へば遠く来たもんだ/十二の冬のあの夕べ
港の空に鳴り響いた/汽笛の湯気は今いづこ

ですね。
冒頭の一行を使って、
武田鉄矢が、歌を作っている。
きっと、この一節にインスパイアされたに違いない。
いまでは、そちらの方が有名かもしれない。
音程も定かでない武田鉄矢が歌ってもねぇ。
映画まで作られたみたいだが、困ったものだ。
(ちなみに、僕は観ていません)

軌道修正。
このごろ、この中也の一節が妙に身に染みるのです。
公演が終わって、
気づいたら、ふと口ずさんでいた。

『ザ・初見!』はなんども書いているように、
コロナ禍の中で企画された演劇スタイルです。
そういう特殊な事情だから、
本来の演劇の範疇には入らないのかもしれない。
まあ、邪道と言えば邪道である。
友人の中には、次は?という心優しき人間もいるけれど、
僕としては、これが最後かもしれないと思う。
完パケした後、制作の矢野とコーヒーを飲みながら、
・・・かもね、というと、
彼女がいつものようにニヤニヤしているのを見て、
苦いマンデリンといっしょにそっと言葉を流し込んだ。

とりあえず、アンケートを見てみるかな。
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